住民税非課税世帯への3万円給付案の矛盾 – 本当に困っているのは誰?世代間格差と税金の再分配を考える

政府が新たな経済対策として、住民税非課税世帯に3万円を給付する案を検討しています。

しかし、この施策には大きな矛盾があるのではないでしょうか。住民税非課税世帯の多くは年金生活者で実は多額の資産を持ち裕福な人も少なくありません。

一方で働き盛りの世代は高い税金を払うことにより所得が上がらず生活に苦しんでいるケースも。今回は、この給付金政策の問題点と世代間格差の実態について深掘りしていきます。

この記事を読むと分かること:

  • 住民税非課税世帯への3万円給付案の概要と問題点
  • 年金生活者と現役世代の経済状況の違い
  • 世代間格差の実態と税金の再分配の課題
  • より公平な経済対策のあり方

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住民税非課税世帯への3万円給付案の概要

政府は2024年11月、新たな経済対策の一環として住民税非課税世帯に対して1世帯当たり3万円を給付する案を検討していることが明らかになりました。この政策の主な内容は以下の通りです:

  • 対象:住民税非課税世帯
  • 給付額:1世帯につき3万円
  • 子育て世帯への加算:子ども1人当たり2万円を加算(住民税非課税世帯)

この施策は、物価高騰対策として提案されており低所得世帯の生活支援を目的としています。しかし、この政策には様々な問題点や矛盾が指摘されています。

どのような問題があるのか見ていきます。

住民税非課税世帯の条件

まず住民税が非課税となる主な条件は以下の通りです:

  • 前年の合計所得金額が一定額以下(単身者の場合約100万円、夫婦世帯の場合約155万円)
  • 障害者、未成年者、寡婦、ひとり親
  • 生活保護受給者

住民税非課税世帯の年代別分析

その住民税非課税世帯の年代別分析を見ていきます。


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年代別の住民税非課税世帯の割合

令和4年国民生活基礎調査のデータによると、年代別の住民税非課税世帯の割合は以下のようになっています:

  • 29歳以下:約9.5%
  • 30~39歳:約7.0%
  • 40~49歳:約11.5%
  • 50~59歳:約17.8%
  • 60~69歳:約38.4%
  • 70~79歳:約88.6%
  • 80歳以上:約69.5%

このデータから、60歳以上の世帯で住民税非課税世帯の割合が急激に増加していることがわかります。特に70代では約9割が非課税世帯となっており、高齢者世帯に給付金が集中する傾向が顕著に表れています。

これは誰もが分かると思いますが年金をもらうようになって働かなくなったからです。一定金額以下ならば年金をもらっても非課税世帯になります。

非課税世帯の年齢構成の特徴

住民税非課税世帯の多くは高齢者世帯です。

厚生労働省「2022年国民生活基礎調査」から全体を100%とした場合の各年代の住民税非課税世帯の割合は以下のように計算されるそうです。

  • 70代:36.6%
  • 80代以上:28.7%
  • 60代:15.8%

引用元:給付金の対象によくなる住民税非課税世帯はどんな世帯?

つまり、住民税非課税世帯の80%以上は60代以上です。住民税非課税世帯への現金支給案は貧しい人ではなく高齢者(年金世代)への支給になっていると言われるのはこのためです。

年金生活者の経済状況

次に住民税非課税世帯の多くを占める年金生活者の経済状況を詳しく見ていきましょう。ここで驚くべきことが見えてきます。

年金生活者の資産状況

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2023年)によると60歳以上の世帯の平均金融資産保有額は2,516万円となっています。これは全世帯平均の1,270万円を大きく上回っています。

また、同調査では60歳以上の世帯の約7割が「老後の備えは十分」または「まあ十分」と回答しています。

年金以外の収入源

年金生活者の中には、年金以外にも収入源を持っている人も多くいます。例えば:

  • 不動産収入(賃貸アパートなど)
  • 株式配当
  • 退職金の運用益
  • パートタイムの仕事

これらの収入は必ずしも所得として計算されないため住民税非課税世帯に該当しながらも実際には経済的に余裕がある場合があります。


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現役世代の経済状況

一方で、働き盛りの現役世代の経済状況はどうでしょうか。実は、多くの現役世代が経済的に苦しい状況に置かれています。

現役世代の収入と支出

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、20〜40代の平均年収は以下のようになっています。

年代 平均年収
20代 約330万円
30代 約430万円
40代 約510万円

これらの収入に対して、現役世代は以下のような支出を強いられています。

  • 住宅ローンや家賃
  • 子育て費用(教育費、食費など)
  • 社会保険料(年金、健康保険、介護保険など)
  • 所得税・住民税

特に、子育て世代の支出は大きく経済的な余裕がない世帯も少なくありません。

昨今は少子化が問題になっていますが、子育て世代に厳しい政策をしているので当然のことです。当たり前の話と言えます。

現役世代の貯蓄状況

金融広報中央委員会の調査によると、30代の世帯の約3割、40代の世帯の約2割が「貯蓄ゼロ」と回答しています。

また、「老後の備えが不十分」と感じている人の割合は、30代で約8割、40代で約7割に上ります。

住民税非課税世帯への給付の状況

これまで説明したように、現役世代の多くが経済的に厳しい状況に置かれているにもかかわらず高い税金を払いながらぎりぎり生活している人が多いのが現状です。

一方で年金世代は十分な資産を持ち更に年金をもらうことで余裕がある人が多いにもかかわらず住民税非課税世帯ということで税金をほとんど納めていません。

そんな状況で更に年金世代を中心に上乗せ給付すると言う明らかにおかしいと言えます。そしてそのおかしなことがここ数年続けて行われているのです。

  1. 2023年度:
    • 住民税非課税世帯に対して7万円または10万円を給付
  2. 2024年度:
    • 新たに住民税非課税となった世帯に対して10万円を給付
    • 18歳以下の子どもがいる世帯には子ども1人あたり5万円を追加給付(住民税非課税世帯)
  3. 2024年度末〜2025年度(予定):
    • 住民税非課税世帯に対して3万円の給付を検討中
    • 子育て世帯には子ども1人当たり2万円の追加給付を検討中(住民税非課税世帯)

3万円給付案の矛盾点

ここまで見てきた現状を踏まえると住民税非課税世帯への3万円給付案には以下のような矛盾点があることがわかります。

資産の考慮がない

給付金の対象を決める際に、所得のみを基準としており資産の状況が考慮されていません。

そのため、十分な資産を持ち裕福な高齢者世帯にも給付金が支給される一方で、資産はないが所得がある貧乏な現役世代は対象外となってしまいます。

世代間格差の拡大

この政策はすでに存在する世代間格差をさらに拡大させてしまいます。

平均的に資産を多く持つ高齢者世帯にさらに給付金を支給することで世代間の経済格差を更に広げているというのは説明するまでもないでしょう。


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税金の再分配の不公平さ

経済的に余裕のない現役世代が納めた税金が、平均し経済的に余裕のある高齢者世帯に再分配されるという構図は税金の公平な使用という観点から問題があると言えるでしょう。

すでに高齢者を救うために現役世代から各種税金を上げることで現役世代の所得が下がり続け生活が苦しくなっています。それによって格差が生じ不公平感があるのに更に格差、不公平を広げてどうするのでしょう?

経済対策としての効果の疑問

給付金の目的は物価高騰対策ですが資産のある高齢者世帯に給付してもその多くが貯蓄に回ってしまう可能性が高い。そのため経済対策としての効果も限定的になる可能性があります。

より公平な経済対策のあり方

では、どのような経済対策であればより公平で効果的なのでしょうか。以下に、いくつかの提案を挙げてみます。

資産状況を考慮した給付

所得だけでなく、資産状況も考慮に入れた給付基準を設けることで、真に支援が必要な世帯に的確に給付金を届けることができるでしょう。

もちろん現状では資産状況を確認する方法がないのが事実。とは言え単純に低所得者に支給するのは「生活が厳しい人に支給する」という原点から考えると明らかにおかしいと言えます。

現役世代への支援強化

子育て世帯や若年層への支援を強化することで世代間格差の是正につながります。例えば、以下のような施策が考えられます。

  • 児童手当の拡充
  • 教育費の負担軽減
  • 若年層の住宅取得支援

これらの政策が矛盾の多い住民税非課税世帯への3万円給付よりも優先度が高いのではないでしょうか。

消費喚起につながる給付方法

単純な現金給付ではなく地域振興券や期限付きのポイント付与など確実に消費につながる給付方法を採用することで経済対策としての効果を高めることができます。

もちろんこの方法にも問題はありますが単純な住民税非課税世帯への給付よりは良い案と言えるでしょう。

社会保障制度の見直し

年金制度や医療保険制度など社会保障制度全体を見直し世代間の負担の公平性を高めることが重要です。

現在は人数の少ない現役世代が年配の世代を支えるという矛盾した構造。今後は少子化で更に厳しい状況になることが予測されます。早いうちに抜本的な対策が必要と言えるでしょう。

まとめ

住民税非課税世帯への3万円給付案は、一見すると低所得者支援のための良い施策に見えます。

しかし実際には多くの矛盾を含んでおり、すでに生まれている不公平な世代間格差を更に拡大させる政策となっています。

真に効果的な経済対策を実現するためには、単純な所得基準だけでなく資産状況や世代間の公平性を考慮に入れたきめ細かな施策が必要です。

また現役世代への支援を強化し将来の日本経済を支える世代の経済的基盤を強化することも重要でしょう。

政府には短絡的な対策だけでなく長期的な視点に立った経済政策の立案を期待したいものです。

またこのような問題提起をすると「世代間の対立を煽るのはよくない」といった論点ずらしをよく聞きます。現実には世代間の対立を煽る不公平な政策をしている政府に問題があります。文句は政府に言うべきでしょう。

この記事のまとめ:

  • 住民税非課税世帯への3万円給付案には資産を考慮していないなどの問題点がある
  • 年金生活者の中には十分な資産を持つ人も多く一方で給付を受けられない現役世代は経済的に苦しい状況にある
  • 世代間格差を拡大させる可能性のある現行の給付金政策は見直しが必要
  • 資産状況の考慮や現役世代への支援強化など、より公平で効果的な経済対策が求められる

 

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