「アメリカの未成年者トランスジェンダーケア:寛容から規制への変遷と今後の展望」

アメリカにおける未成年者のトランスジェンダーケアは、ここ数年で大きな変化を遂げています。寛容な態度から厳しい規制へと揺れ動く中、医療、倫理、法律の観点から激しい議論が巻き起こっています。

この記事では、アメリカの未成年者トランスジェンダーケアの歴史的変遷、現状、そして今後の展望について詳しく解説します。LGBTQの権利に関心のある方、医療や教育に携わる方、そして未来の社会のあり方を考える全ての人にとって、重要な情報源となるでしょう。少しずつ下がっげ現在までの状況を確認ください。

この記事を読むと分かること:

  • アメリカにおける未成年者トランスジェンダーケアの歴史的変遷
  • ホルモン療法や思春期抑制剤の使用状況と議論
  • 各州で制定された規制法の内容と影響
  • 医療専門家と政治家の間での意見の相違
  • SNSがトランスジェンダーの若者に与える影響
  • 未成年者の権利と親の同意に関する法的問題
  • 今後のトランスジェンダーケアの展望と課題

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未成年者トランスジェンダーケアの歴史的変遷

未成年者トランスジェンダーケアの歴史的変遷についておおまかに紹介します。


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初期の寛容化(2010年代前半〜中盤)

2010年代に入ると、アメリカ社会でトランスジェンダーの若者に対する理解が徐々に深まっていきました。この時期、医療機関や学校でトランスジェンダーの子どもたちへのサポートが増え始めます。

例えば、2013年にカリフォルニア州で「学校成功・機会法」が成立し、トランスジェンダーの生徒が自認する性別に基づいて学校施設を利用できるようになりました。これは全米初の画期的な法律でした。

医療面では、アメリカ小児科学会が2018年に、トランスジェンダーの若者へのサポートに関するポリシーステートメントを発表。これにより、多くの医療機関が未成年者へのトランスジェンダーケアを積極的に提供するようになりました。

医療ケアの拡大(2010年代後半〜2020年初頭)

この時期、ホルモン療法や思春期抑制剤の使用が急速に増加しました。具体的な数字を見てみましょう。

ホルモン治療開始者数 思春期抑制剤使用者数
2017年 約3,600人 約1,200人
2021年 約14,700人 約4,780人

わずか4年で、ホルモン治療を開始する未成年者が約4倍、思春期抑制剤を使用する未成年者が約4倍に増加しています。

この急激な増加は、医療アクセスの改善や社会の理解の深まりを反映していますが、同時に懸念の声も上がり始めました。

<ホルモン治療とは?>
ホルモン治療は身体的特徴を自認する性別に近づける目的で行われるもので、性別違和感を軽減し精神的健康を改善する効果が期待されます。その一方で長期的な健康への影響、治療の可逆性(一旦行うと身体の変化を完全に元に戻せないケースがある)などが問題として考えられます。特に意思決定能力が発達途上の未成年については慎重な評価と包括的なサポートが必要です。治療には主に思春期抑制療法とクロスセックス・ホルモン療法があり、開始時期や効果、リスクが異なります。専門医による綿密な診断と継続的なモニタリング、そして本人と家族への十分な情報提供と同意が不可欠です。

規制の動きと法的挑戦

医療ケアの拡大があまりにもいきすぎたとして規制する動きが2021年頃から出てきています。

規制法の制定(2021年〜現在)

2021年4月、アーカンソー州が全米で初めて未成年者への性別適合医療を禁止する法律を制定しました。この法律は、18歳未満の若者へのホルモン療法や思春期抑制剤の使用を禁止するものでした。

その後、雪崩を打つように多くの州が同様の法律を制定しています。2024年現在、少なくとも19の州(一部の情報では23州)が未成年者への性別適合医療を制限または禁止する法律を持っています。

これらの法律の主な内容は以下の通りです:

  • 18歳未満の未成年者へのホルモン療法の禁止
  • 思春期抑制剤の使用禁止
  • 性別適合手術の禁止
  • これらの治療を行った医療従事者への罰則規定

法的挑戦(2021年〜現在)

しかし、これらの禁止法は多くの法的挑戦に直面しています。LGBTQ+権利団体や医療専門家が中心となって、これらの法律の合憲性を問う訴訟が次々と起こされています。

例えば、2023年6月にはアーカンソー州の禁止法が連邦地裁で無効とされました。裁判所は、この法律が憲法で保障された平等権を侵害していると判断したのです。

同様に、アラバマ州、フロリダ州、インディアナ州でも、禁止法の施行が裁判所によって阻止されています。これらの判決は、未成年者のトランスジェンダーケアに関する法的な議論がまだ決着していないことを示しています。

(トランプ氏が大統領になることでこれら禁止する動きが再び活発化する可能性はありそうです)

現在の状況と議論(2024年)

現在の状況と議論を整理します。

州による対応の違い

現在、アメリカの各州は未成年者のトランスジェンダーケアに関して大きく3つのグループに分かれています:

  1. 厳しい規制を行っている州(例:テキサス、フロリダ)
  2. 寛容な姿勢を維持している州(例:カリフォルニア、ニューヨーク)
  3. 中間的な立場の州

この状況は、アメリカの連邦制の特徴を反映しています。同じ国内でも、住んでいる州によって受けられる医療ケアが大きく異なるという現状があるのです。

自分の住んでいる州の規制が嫌な人は他の州に引っ越しするケースもあります。

医療専門家と政治家の意見の相違

この問題に関しては、医療専門家と政治家の間で意見が大きく分かれています。

医療専門家の多くは、適切なガイドラインに基づいたトランスジェンダーケアを支持しています。アメリカ小児科学会やアメリカ医師会などの主要な医療団体は、未成年者へのトランスジェンダーケアが精神的健康の改善につながるという研究結果を支持しています。

一方、多くの保守派政治家は未成年者への不可逆的な医療処置に懸念を示しています。特にホルモン療法は不可逆な変化が起きることがあります。体に変化が起こった後で後悔しても遅い可能性が。

彼らは成長過程にある子どもたちが十分な判断力を持たないうちに重大な決断を下すことへの危険性を指摘しています。

SNSの影響と親の同意の問題

SNSの影響と親の同意の問題についても無視できません。

SNSがトランスジェンダーの若者に与える影響

近年、SNSがトランスジェンダーの若者の増加に影響を与えているのではないかという議論が起こっています。「急性発症性別違和(ROGD)」という概念が提唱され、SNSの影響で突然性別違和を感じる若者が増えているという説があります。

しかし、この見方には賛否両論があります。支持者はSNSがトランスジェンダーのアイデンティティを「流行」のように広めていると主張します。一方、批判者はSNSは単に既存のトランスジェンダーの若者たちが自己表現する場を提供しているだけだと反論しています。

この問題に関しては、まだ確立された科学的コンセンサスがありません。今後の研究が待たれるところですが、現実にSNSに影響を受けて医療ケアを選択し後悔した人もいるのは事実です。何らかの解決方法を見出す必要があるでしょう。

親の同意なしのホルモン療法は可能か?

SNSで「親の許可なしにホルモン療法を受けられる」という情報が広まっていますが、実際にはそのようなケースは非常に限られています。

多くの州では、未成年者のホルモン療法に親の同意を必要としています。しかし、一部の州では例外があります。例えばメイン州では、16歳以上の未成年者が特定の条件を満たせば、親の同意なしにホルモン療法を受けられる法律があります。

ただし、これには以下のような厳格な条件が設けられています:

  • 医療専門家が治療の必要性を認めること
  • 未成年者が治療の内容と影響を十分に理解していること
  • 治療が未成年者の最善の利益になると判断されること

つまり、SNSで広まっているような「簡単に」親の同意なしでホルモン療法を受けられるわけではありません。

(とは言え実際に治療を受けた事例はあります。また先に紹介したように医療専門家は前のめりなのでその専門家のアドバイス自体にバイアスがかかっているのでは?という意見もあります。中には「専門家から「治療を受けないと子供が自殺する可能性もある」と脅迫めいたアドバイスを受けたという証言もあります」)


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今後の展望と課題

未成年者のトランスジェンダーケアを巡る激しい議論は、今後も続くことが予想されます。

専門家によるとホルモン療法を受けた患者の98%が5年後も治療を継続し満足していると報告している一方で未成年については十分なデータがないとされそれが専門家の意見を信用できないと主張する声もあります(また2%とは言え不満を感じている人がいることも事実。その人達の意見も聞くべきでしょう)。

2024年10月からは、最高裁判所がこの問題を審理する予定です。この判断が、全米の未成年者トランスジェンダーケアの方向性を大きく左右する可能性があります。

また、連邦レベルでの統一的な対応を求める声も高まっています。トランスジェンダー権利法案(Transgender Bill of Rights)が提案されており、これが可決されれば性別に基づく差別を禁止し、未成年者と成人の性別適合医療へのアクセスを保護することになります。

一方で、この問題は単純に法律だけで解決できるものではありません。医療、倫理、教育など、多方面からのアプローチが必要です。特に以下の点が今後の重要な課題となるでしょう:

  • 長期的な研究:トランスジェンダーケアの長期的な影響に関する研究の蓄積
  • 教育と啓発:トランスジェンダーに関する正確な情報の普及
  • 医療アクセスの公平性:地域や経済状況に関わらず、必要なケアを受けられる体制の構築
  • 心理的サポート:トランスジェンダーの若者とその家族への包括的な支援体制の確立

未成年者のトランスジェンダーケアは、個人の権利、医療倫理、社会の価値観が交錯する複雑な問題です。これからの社会がどのようにこの問題と向き合っていくのか、注目が集まっています。

アメリカでは行き過ぎた動きにより今は逆に戻ってきている状況。現実に被害者が出てからでは遅いです。日本もアメリカと同じように行き過ぎた動きがないように慎重に進めるべきでしょう。

補足)
日本ではいきすぎた未成年者トランスジェンダーケアを警告するKADOKAWAの書籍「あの子もトランスジェンダーになった」がLGBTQ推進派の強硬な発売停止要求を受け発売を止めましたが明らかにおかしな動きで推進派からも批判を受けています。アメリカの現在の状況を正しく知るためにも、今後の日本の方向性を考えるためにも、どちらの意見も平等に確認するべきです
(その後産経から「トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇」というタイトルで発売されています)
(日本では推進派の医療関係者の話を元にして強硬に出版に反対する意見が多かったのでこの書籍に関して世界でも否定派が主流のように感じた人も多いかもしれませんが、現実には「今年最高の1冊」タイムズ紙(ロンドン)、「今年最高の1冊」エコノミスト誌と世界的に評価する声が多数あります)

この記事のまとめ:

  • アメリカの未成年者トランスジェンダーケアは、2010年代の寛容化から2020年代の規制強化へと変化
  • 現在、19〜23州が未成年者への性別適合医療を制限または禁止する法律を制定
  • 医療専門家と政治家の間で意見が分かれており、法的挑戦も続いている
  • SNSの影響や親の同意なしのホルモン療法については議論が続いている
  • 2024年10月からの最高裁判所の審理が今後の方向性を左右する可能性がある
  • 長期的研究、教育啓発、医療アクセスの公平性、心理的サポートが今後の重要課題

 

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